奥沢 やきとり「鳥汎」
※2010年7月2日 520,000カウント通過 感謝!
奥沢 やきとり「鳥汎」




sakuraと待ち合わせたのは東急目黒線の奥沢駅である。奥沢駅の南口側には小さな広場があって、待ち合わせにはちょうど良いのである。
この奥沢駅の駅脇を通る「自由通り」を渡った向こう側の路地に、第93回、第143回、第151回で紹介したやきとり「さいとう」がある。しかし、今日はそちらには向かわない。自由通りを渡って南へ、すぐに右斜めの道に入ったいった。この分岐の三角地には、私などはとても入れない高級価格の寿司店がある。その寿司店を左に見ながら小さな商店街に入る。赤提灯がすぐに左手に見えた。古い暖簾に「鳥汎」と書いてある。これは「とりひろ」と読ませるのである。本当に古くからある店であり、すでに35年以上たっているという。
店の入口を開けた途端、右手のカウンターの端の男性と目があった。本当にすぐ目の前に座っておられたのである。私も驚いたけれど、先方の方のことも少し驚かせてしまったようである。
カウンター席は8席ある。すでに、1席を残して7席がいっぱいであった。左手に小上がり席が三つ。手前から四人掛けが二つ、一番奥は少し広くて五人掛けが可能のようだ。そちらは全て空席であった。
「二人なんですけど・・・」と言う。カウンター席の中の女将さんが「奥へどうそ」とおっしゃる。カウンターの椅子の後ろを「すみませんね」と言いながら通ってゆく。狭いのである。
入って左にカラオケ装置が置かれ、ギターもある。誰か常連の方が弾かれるのだろうか。第90回や第250回で紹介した中目黒のお店でマスターがギターを弾いてくれた時のことを思い出した。
「何を飲まれますか」と女将さんがおっしゃる。メニューは特にない。ビールはsakuraが苦手な銘柄なので止め、燗酒をお願いした。
まずは、ワカメとキュウリとカニカマボコの酢の物が出される。お通しである。
女将さんがお銚子と御猪口をもってくると、二人にそれぞれお酌をしてくださった。
「冬じゃないんで、このくらいにしました」と女将さん。
一口飲むと、本当にちょうど良いぬる燗である。普段は熱燗好きのsakuraも喜んでいる。
一人の男性客が入ってきて、カウンター席は男性客ばかり8人で満席になった。
しばらくして、女将さんが来て注文をとってくれた。
「うちはメニューがないんで・・・」とおっしゃる。調理場の壁のホワイトボードに十数品のつまみが書いてあった。その中からいたわさ(550円)を一つ。やきとりメニューは女将さんが口にされた中からネギマとつくねを2本ずつタレでお願いした。
2本目の燗酒を頼む。一人帰られ、すぐに一人が来られ、またカウンターは満席になった。
「はい、お願いします」と言って2本目の燗酒を持ってきてくださる。
やきとりもやって来た。円い団子状のつくねではなく串に巻くように塗りつけて焼いたものである。甘口のタレが美味しかった。
少し疲れた雰囲気の女性の方が入ってこられた。すると、座っておられた男性が席を譲って帰られた。また満席である。
3本目の燗酒をお願いする。ミートソーススパゲティー(750円)、焼きそば(750円)などもある。一人で来る男性客の為の夕食メニューに違いない。
店名の「鳥汎」を「とりひろ」と読ませるように、お店の中にも「謎」が用意されていた。
カウンターの中の調理場の壁に「手書き文字」がたくさん貼ってある。単なるメニューではなく、「謎」が客に対して提供されているのである。sakuraと二人、謎解きをしながら読み始めて、止められなくなってしまった。女将さんに聞けば早いけれど、それでは面白くない。また、写真を撮影して、掲載するば良いのかもしれないけれど、こんな味わいある店で、常連の方々が楽しくお酒を飲んでいるその席で、写真を撮影するようなそんな無粋なことは私には出来ない。
しかし、一部を紹介してみたいと思う。すべて毛筆、縦書きで書かれている。
「鮎」・・・一見「あゆ」の文字が書いてあるように見せて、実はつくりの「ト」と「ロ」の間が少し空いている。これはトロと読ませるに違いない。
「春夏冬中」・・・これは「あきないちゅう」と読むに違いない。「春夏秋冬」の秋が無いので「秋無い」、秋無いを「あきない」と読んで、「商い」とかけ、「あきないちゅう」と読ませたのである。
「鱈湖」・・・「たらこ」とすぐに読める。
「湖櫓津懸」・・・4文字のうち、「津」だけが小さい・・・答えはコロッケでは。
「鬆、破の脇に半濁音の○、夏、艇」・・・私はスパゲティーと読んだ。
「魚へんに花」・・・これはホッケ。パソコンでは文字を表示できない。
「鯵強盗」・・・これは読めなかった。
「魚信女」・・・これも読めなかった。
読みにくい言葉ばかりではない。「もやし炒めピリ辛ソース」「酢豚」「かに玉」なども同じような文字で書いてあった。今日は思わぬ頭の体操をしてしまった。
振り返ると古いトロフィーや不思議な置物が置かれている。壁には何かの記念写真がたくさん貼ってある。常連客の皆さんの談笑する声が心地よい。私の背後では古いラジオが交通情報などをずっと流していた。小さな音なので他の人にはよく聞こえていないに違いない。不思議な郷愁と共に、ゆるい時間が流れていった。
午後6時45分から7時45分まで1時間ほどの滞在。お勘定は3,290円であった。
※ ※ ※
なお、以前「鳥汎」さんが取り上げられた時の映像が2010年3月12日のBS-TBS「吉田類の酒場放浪記」で再放送される。壁の謎の文字を確認されたい方は御覧になると良い。
※ ※ ※
追記 素晴らしいことに、すぐに読者の方から読めなかった言葉についてコメント欄に書き込みがあった。
「鯵強盗」・・・あじたたき
「魚信女」・・・あたりめ
たしかに、警察用語で強盗のことを「たたき」という。だから、「鯵強盗」は「あじたたき」になる。釣り用語で魚がエサをつつく様子を「あたり」と言うけれど、同じことを「魚信(ぎょしん)」というそうである。だから、「魚信女」は「あたりめ」と読みかえできるのだ。とても勉強になった。読者の方に感謝である。

奥沢 やきとり「鳥汎(とりひろ)」
住 所 東京都世田谷区奥沢3-31-4
電 話 03-3720-3525
定休日 第2日曜
営業時間 17:00~24:00
交通 東急目黒線奥沢駅下車徒歩2分
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ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
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