秋津 立ち飲み「野島」
西のホッピー通り探索 その2
秋津 立ち飲み・やきとり「野島」




MOOK本「TOKYO大衆酒場」の中で「西のホッピー通り」として紹介されていた、西武池袋線の秋津駅からJR武蔵野線の新秋津駅に至る商店街をGAIと二人で訪ねた。
二軒目は、前回のお店から十数メートル新秋津よりに歩いた左手にある。
時間は午後2時前である。開店時間は午後3時。かなり早くからお店を開けてくれることは情報として知っていた。
しかし、まだ1時間前である。中に人の気配を感じるけれど、入口は開けていない。そこで周辺を少し歩いてみることにした。
JR武蔵野線の新秋津駅まで行く。
JR武蔵野線沿線には、府中本町に東京競馬場、船橋法典に中山競馬場がある。他に戸田ボート、川口オート、浦和競馬場、船橋競馬場、船橋オート、多摩川競艇もあり、ギャンブル路線として有名である。
さらに、今回は新秋津駅前から西武園競輪場行きの直通バスがあることを発見。ますますギャンブル路線であることを確認した。「春駒」、「大漁船」、「サラリーマン」といった前述の雑誌に掲載されていた店の場所も確認する。
しばらく周辺を歩いてから店の前に戻ってみた。
「地酒東村山」から提供されたアクリル製看板には、「地どり・やきとり・特製もつ煮 野島」と書かれている。
一間間口の建物の右側が焼き台になっており、おみやげで焼き鳥を買ってゆけるようになっている。左側に入口があり、立ち飲みカウンターが手前から奥に続いている。我々はここからは入らずに店の右側の路地を歩いて行く。すると、店の建物の裏側にテント張りの外空間がある。立ちのみテーブルがいくつかあって、すでにそこで飲んでいらっしゃる方が数人。
裏口側からさきほどのカウンターへGAIと二人で入ってゆく。先客は入口付近に一人、一番奥に一人いらっしゃる。真ん中辺りに二人で立つことにした。
やはり、こちらのお店でも黒ホッピーセット(300円)を2つお願いする。
「ホッピーセット300円は、ずいぶん安いなあ」とGAI。本当に驚くべき安さである。
焼き台でマスターらしき方が焼き物を焼いている。女将さんらしき方が注文をきいてくれる。
「お名前は?」と女将さん。
しかし、事前の情報で解っているので私は驚かない。
「あらたけといいます」と私。
「あら・・・たけ? どんな字ですか?」と女将さん。
「新しいに武士の武・・・」とGAIが脇から一言。
「いや、そうじゃなくて・・・新しいにタケという字です」
「おかのしたにやまみたいな・・・」と言って女将さんが「岳」の字を伝票に書いて見せてくれる。
「あっ、それそれ、その字・・・なんだか難しくてすいません」
「いえいえ、いいのよ・・・」
「ああ、わるいわるい」とGAI。実際、新武という筆名を使っていた時期もあったのである。
この後、次のような注文をお願いする。
まずは、かしら(90円)、なんこつ(90円)、地どり(90円)、鳥皮(90円)を各2本。
川崎辺りのホッピーセットには小さなレモンが一片入っている。
それと同じように小さく切ったレモンがカウンターテーブルの上の小皿に入っている。これを自分でホッピージョッキに入れるのだ。レモンを入れるか入れないかを自分で決められるこのスタイルがうれしい。
カウンターの中の棚の中には、グラスに焼酎を入れたものがたくさん並んでいる。第281回と第360回で紹介した横浜・桜木町の立ち飲み「石松」と同じである。
まだ混んでいないので、焼き物がすぐに出てきた。どれも普通の店よりも大きい。鳥皮は肉がついていて、普通の店の鳥皮とは違う。野性味のある焼き鳥である。どんどん食べてしまう。
「こんなに、肉を食べたなあ、という感じは久しぶりだな」とGAI。私も同感であった。
GAIが中焼酎(200円)を追加する。これも量が多い。
焼き物の注文がどんどん入る。我々も負けじと、レバー(90円)とタン(90円)を塩で2本ずつ頼んだ。
出てきたものを見て、二人とも絶句する。
タンは皿の左側に寄せてある2本、肉が普通の店の1.5倍はあった。
しかし、驚くべきレバー焼きだった。串に刺してある肉の一つの大きさが3倍から4倍ある。それが串に3つづつ刺してある。大きめの角皿の三分の二をレバー2本が覆っている。
「ナイフとフォークを持ってこい!って感じだね」とGAIが言う。
本当にその通りである。こんなレバ焼きを食べたことがない。何百軒という焼き鳥屋さんやもつ焼き屋さんで食べたことがあるけれど、こんなのは初めてである。
「店内での撮影をしない」という方針があるので撮影をする訳にはいかない。
是非、このレバーの巨大さは、現地へ行って実物を見ていただきたいと思う。
本来の開店時間が近づいてくると、お店の若い女性たちが次々に出勤してくる。お客さんもどんどん増えてゆく。焼き物と飲物の注文が飛び交う。
注文したものが出来上がると、「田中さんの○○、上がりね!」というふうに「名字」が飛び交うのが面白い。
女将さん以外の女性の総勢は5名となった。全員が忙しく働いている。カウンターの外も中も人でいっぱいになっている。
私の2杯目はトマト割(300円)である。
全体に「ホッピーセット」を頼み、中焼酎を頼む方の率が高い。「中、お願い」「中ね」「焼酎中ね」という言葉が飛び交う。皆さん「中3、外1」のペースに違いない。
そして、3時の開店時間を前に、次々に御勘定をして帰る方がいる。皆さん、こちらのお店がどれだけ混むのかを知っているのである。
「ここのレバーには驚かされたなあ。あの『ブレードランナー』のセリフを思い出すよ、ハリソン・フォードが屋台でヌードルを食べる時、日本人らしきじいさんが言うセリフ・・・」とGAI。
「わかってくださいよ、2つで十分ですよ・・・」
映画の中では、このようなやり取りになっている。
雨の中、新聞を傘にして屋台に入ってきたハリソン・フォード。
「4つ」とハリソン・フォード。
「2つで十分ですよ、お客さん」とじいさん。
「それとうどんも」とハリソン・フォード。
「わかってくださいよ・・」と、しつこく言うじいさん。
本当にこちらのお店のレバーは「1人1本で十分ですよ、普通の店の4本分くらいありますから・・・」と言いたくなる量である。
店内はどんどん混んでゆく。
「焼酎中ね」「中よろしく」「こっちも中ね」という言葉がさらに飛び交っている。
「テレビのポケットモンスターの歌詞を思い出すな」とGAI。
「へえ、そうなんだあ」と私。
「なかなか、なかなか、なかなか、なかなか大変だけど、かならずGETだぜってやつ・・・」
「中、中、中、中かあ・・・ははは」
「そんなに中頼んで呑んだら死ぬよなあ」
「まったくだあ」
二人で大笑いである。たわいのない酔っぱらい親父たちの会話である。
「西のホッピー通り」は、観光地化して一部のお店が高い価格設定になってしまっている「東の・・・」よりもずっと好印象であった。
カウンター席は一杯になっていた。しかし、それは普通のお店でのことである。まだまだ入るのである。
二人の男性の方々が入ってこられた。お店の女性に導かれて、我々の背後に立つ。
その方たちに、「ここ、もう出ますから・・・」と自分たちから伝え、お店の方に御勘定をお願いする。
「あらたけさん、2,380円ねえ」と言われ、支払いをして外に出る。
混む店では場所を早めに譲る。これは常識である。
午後2時25分から3時20分まで50分ほどの滞在。御勘定は2,380円であった。
前回も書いた通り、今、問題になっている「自粛」からは遠い、民衆の「エネルギー」を感じた。
「それ本当に必要ですか?」というCMを見ていると、買いたくなっても買うのをやめてしまうという話を聞く。買い占めることはよくないけれど、「買う」ことをやめてしまえば、経済全体が滞ってしまう。そうすれば、誰かを救うことも出来なくなる。働いて、飲んで、食べて、買い物をして、自分も誰かも幸せにする。それが一番ではないだろうか。
店を出ると、再びJR武蔵野線の新秋津駅へ行った。JR武蔵野線に乗り混み、二つ目の西国分寺でJR中央線に乗り換えて向かったのは、親友GAIの本拠地、吉祥寺であった。
(つづく)
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追記 こちらのお店については、バッカス氏も書いていらっしゃるので、そちらの記事もご覧いただきたい。
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身近な節電方法 その2
家中の電球型照明器具は、昨年からLED電球と電球型蛍光灯に全て変えてしまってあります。家の外の照明などは人感センサー付のものに変えます。(早い時期に白熱電球は全て生産中止にするべきでしょう)。もっとも長い時間滞在している居間の電灯は40ワット蛍光灯3本と5本の切り替え式でした。これを別々なスイッチ付の3灯の電灯がついた床置きのスタンド灯を置き、それぞれの電灯に電球型蛍光灯を3つ取り付け、必要な分だけを点灯するようにします。

秋津 立ち飲み・やきとり「野島」
住所 東京都東村山市秋津町5-8-1
電話 042-397-3455
定休日 日曜日
営業時間 月~金15:00~22:00 土15:00~21:00
交通 西武池袋線秋津駅南口下車徒歩1分。JR武蔵野線新秋津駅下車徒歩3分。
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
実力派俳優になりたい人は→ 演出家守輪咲良のページ「さくらの便り」
Re: ますます恐縮です