蒲田 大衆割烹「三州屋本店」第3回
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第500回 2012年12月13日(木) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
※2012年12月6日 1,070,000カウント通過。感謝!
そして、「居酒屋探偵DAITENの生活」も第500回となりました。またまた感謝!
蒲田 大衆割烹「三州屋本店」 第3回

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ある大切な用事を済ませる為に「川崎」へ行った。
SAKURAと二人である。
川崎の街は面白かったとSAKURAは言う。
JR川崎駅から京浜東北線に乗って隣の蒲田駅へ移動する。
蒲田駅東口駅前の銀行に行った。私は外で待つ。
今日は午前と午後、それぞれ別々の用事があり、ずいぶんと忙しかった。
「もう何時になったろう・・・」と心の中でつぶやく。
腕時計は昔から苦手だった。腕時計を持っていると、何度もそれを見てしまう。
「腕時計」は、時間に拘束されていることの象徴だった。
iPhoneを取り出して時間を見る。
午後3時45分。
平日、こんなに早い時間に、ほんの少しとはいえ、自由な時を得ることが出来るのは珍しい。
目の前を見れば、居酒屋の王道を行く店、大衆割烹「三州屋本店」である。
「三洲屋蒲田本店」は、蒲田駅東口に降り立ち、駅前ロータリーに向かって立つと左手に見える。こんな味わい深い「古典酒場」がターミナル駅の駅前にあることが不思議である。
引き戸を開け、丈の短い暖簾をくぐる。
左手の手前から四人掛テーブル席一つ、二人掛テーブル席三つ、四人掛テーブル席二つと続く。右手奥には、右手壁に向かって座る席が八つ、奥に向かって座る席が二つからなる変則的L字カウンターがある。店の一番奥が調理場になっている。
カウンターの一番奥の方に、人生の先輩が一人いらっしゃるだけであった。平日の午後4時前なのだから当たり前かもしれない。
カウンターの中に立つ若い女性に向かって、指を2本立てて存在を示してから、我々二人もカウンター席の一番手前の方に座った。
SAKURAは、白鶴熱燗小とっくり(380円)である。
私は、ホッピーセット(420円)の白を氷無しで頼む。
飲物と一緒に出てきた突き出しはシラスおろし。
ホッピーの瓶は冷やしてない。
短冊メニューにどじょう料理を発見する。丸煮、柳川、丸煮柳川の3種である。
「柳川と丸煮柳川の違いは何ですか?」と、SAKURAが質問をする。
「丸煮柳川はどじょうがそのまま、柳川はどじょうを開いて骨もとってあります」とのこと。
丸煮柳川(700円)を頼んでみた。
駅前の喧噪から一歩入ると別世界である。
静かに話をしながら短冊メニューを眺める。
ペプシコーラー(180円)を発見。コーラがコーラーと語尾が伸びているのが面白い。
ホッピーを飲む。
「冬はぬるいホッピーもよいなあ。」と思う。
どじょうの丸煮柳川がやってくる。丸のままのどじょうがゴボウの下にいる。
どじょうも美味いけれど、ゴボウがなかなかに良い。
並びの先輩があんきも(580円)を頼む。
「あんきもはカロリーが高いなあ・・・もっと淡泊なものにしよう」と、考える。
ここは、本当にさっぱりとした鳥豆腐(480円)にするべきである。
鳥豆腐は、三州屋各店の名物。
並びの先輩の方の様子を見て、数年前に亡くなった翻訳家の先生のことを思いだした。
戯曲や演劇書の翻訳に人生をささげ、素晴らしいアイデアいっぱいの方だった。その笑顔と語り口を思い出す。
劇場に行く直前、劇場の近くの街の中華料理店で倒れ、そのまま亡くなった。
劇場を愛した先生が観劇の直前に倒れられ、劇場にたどり着けずに亡くなった。
その芝居を上演していた劇団は、先生が創設時に関わった大劇団であると聞く。
しかし、先生はそれを見ないまま・・・突然に去られた。
並びの大先輩が帰ってゆかれる。
「お釣りいらないって、いっちゃいけなかったんだねぇ」と、軽い冗談を言いながら帰ってゆかれた。
長い時を経て、こちらのお店も歴史を感じさせるお店となり、今も生き残っている。この蒲田の駅前で、それが素晴らしいことであると感じた。
店内は我々だけになった。外を見る。赤い回転灯が見えた。蒲田東口駅前に救急車。歳末である。
白鶴熱燗小とっくり(380円)を追加、おちょこをもう一つもらう。
鳥豆腐がやってきた。鳥と豆腐が薄味の出汁の中に入っている。
「出し汁なんだ・・・」とSAKURA。煮込みのようなものと思ったらしい。
「春菊、葱、豆腐、鶏肉・・・あうなあ。燗酒に」
店内は静かである。
しかし、衆議院議員選挙の選挙カーが蒲田東口にやってくる。
誰かがストレッチャーで運ばれ、救急車に乗せられた。
救急車が去るのと同時に選挙演説が始まった。
「我々もそろそろ立ち去ることにしようか」
記念すべき「居酒屋探偵DAITENの生活・第500回目」は、城南地区の王道をゆく静かな大衆酒場であった。
3時45分から4時45分まで、1時間の滞在。お勘定は2人で2,660円。
(了)
第2回紹介 居酒屋探偵DAITENの生活 第415回 2011年4月23日(土)
第1回紹介 居酒屋探偵DAITENの生活 第242回 2009年8月8日(土)
蒲田 大衆割烹「三州屋本店」
住所 東京都大田区蒲田5-11-10
電話 03-3731-5647
営業時間 11:30~22:30
定休日 日曜日
交通 JR京浜東北線蒲田駅東口下車徒歩1分、東急池上線・多摩川線蒲田駅下車徒歩3分、京浜急行線京急蒲田駅下車徒歩10分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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居酒屋探偵DAITENの生活 第500回 2012年12月13日(木) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
※2012年12月6日 1,070,000カウント通過。感謝!
そして、「居酒屋探偵DAITENの生活」も第500回となりました。またまた感謝!
蒲田 大衆割烹「三州屋本店」 第3回




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ある大切な用事を済ませる為に「川崎」へ行った。
SAKURAと二人である。
川崎の街は面白かったとSAKURAは言う。
JR川崎駅から京浜東北線に乗って隣の蒲田駅へ移動する。
蒲田駅東口駅前の銀行に行った。私は外で待つ。
今日は午前と午後、それぞれ別々の用事があり、ずいぶんと忙しかった。
「もう何時になったろう・・・」と心の中でつぶやく。
腕時計は昔から苦手だった。腕時計を持っていると、何度もそれを見てしまう。
「腕時計」は、時間に拘束されていることの象徴だった。
iPhoneを取り出して時間を見る。
午後3時45分。
平日、こんなに早い時間に、ほんの少しとはいえ、自由な時を得ることが出来るのは珍しい。
目の前を見れば、居酒屋の王道を行く店、大衆割烹「三州屋本店」である。
「三洲屋蒲田本店」は、蒲田駅東口に降り立ち、駅前ロータリーに向かって立つと左手に見える。こんな味わい深い「古典酒場」がターミナル駅の駅前にあることが不思議である。
引き戸を開け、丈の短い暖簾をくぐる。
左手の手前から四人掛テーブル席一つ、二人掛テーブル席三つ、四人掛テーブル席二つと続く。右手奥には、右手壁に向かって座る席が八つ、奥に向かって座る席が二つからなる変則的L字カウンターがある。店の一番奥が調理場になっている。
カウンターの一番奥の方に、人生の先輩が一人いらっしゃるだけであった。平日の午後4時前なのだから当たり前かもしれない。
カウンターの中に立つ若い女性に向かって、指を2本立てて存在を示してから、我々二人もカウンター席の一番手前の方に座った。
SAKURAは、白鶴熱燗小とっくり(380円)である。
私は、ホッピーセット(420円)の白を氷無しで頼む。
飲物と一緒に出てきた突き出しはシラスおろし。
ホッピーの瓶は冷やしてない。
短冊メニューにどじょう料理を発見する。丸煮、柳川、丸煮柳川の3種である。
「柳川と丸煮柳川の違いは何ですか?」と、SAKURAが質問をする。
「丸煮柳川はどじょうがそのまま、柳川はどじょうを開いて骨もとってあります」とのこと。
丸煮柳川(700円)を頼んでみた。
駅前の喧噪から一歩入ると別世界である。
静かに話をしながら短冊メニューを眺める。
ペプシコーラー(180円)を発見。コーラがコーラーと語尾が伸びているのが面白い。
ホッピーを飲む。
「冬はぬるいホッピーもよいなあ。」と思う。
どじょうの丸煮柳川がやってくる。丸のままのどじょうがゴボウの下にいる。
どじょうも美味いけれど、ゴボウがなかなかに良い。
並びの先輩があんきも(580円)を頼む。
「あんきもはカロリーが高いなあ・・・もっと淡泊なものにしよう」と、考える。
ここは、本当にさっぱりとした鳥豆腐(480円)にするべきである。
鳥豆腐は、三州屋各店の名物。
並びの先輩の方の様子を見て、数年前に亡くなった翻訳家の先生のことを思いだした。
戯曲や演劇書の翻訳に人生をささげ、素晴らしいアイデアいっぱいの方だった。その笑顔と語り口を思い出す。
劇場に行く直前、劇場の近くの街の中華料理店で倒れ、そのまま亡くなった。
劇場を愛した先生が観劇の直前に倒れられ、劇場にたどり着けずに亡くなった。
その芝居を上演していた劇団は、先生が創設時に関わった大劇団であると聞く。
しかし、先生はそれを見ないまま・・・突然に去られた。
並びの大先輩が帰ってゆかれる。
「お釣りいらないって、いっちゃいけなかったんだねぇ」と、軽い冗談を言いながら帰ってゆかれた。
長い時を経て、こちらのお店も歴史を感じさせるお店となり、今も生き残っている。この蒲田の駅前で、それが素晴らしいことであると感じた。
店内は我々だけになった。外を見る。赤い回転灯が見えた。蒲田東口駅前に救急車。歳末である。
白鶴熱燗小とっくり(380円)を追加、おちょこをもう一つもらう。
鳥豆腐がやってきた。鳥と豆腐が薄味の出汁の中に入っている。
「出し汁なんだ・・・」とSAKURA。煮込みのようなものと思ったらしい。
「春菊、葱、豆腐、鶏肉・・・あうなあ。燗酒に」
店内は静かである。
しかし、衆議院議員選挙の選挙カーが蒲田東口にやってくる。
誰かがストレッチャーで運ばれ、救急車に乗せられた。
救急車が去るのと同時に選挙演説が始まった。
「我々もそろそろ立ち去ることにしようか」
記念すべき「居酒屋探偵DAITENの生活・第500回目」は、城南地区の王道をゆく静かな大衆酒場であった。
3時45分から4時45分まで、1時間の滞在。お勘定は2人で2,660円。
(了)
第2回紹介 居酒屋探偵DAITENの生活 第415回 2011年4月23日(土)
第1回紹介 居酒屋探偵DAITENの生活 第242回 2009年8月8日(土)
蒲田 大衆割烹「三州屋本店」
住所 東京都大田区蒲田5-11-10
電話 03-3731-5647
営業時間 11:30~22:30
定休日 日曜日
交通 JR京浜東北線蒲田駅東口下車徒歩1分、東急池上線・多摩川線蒲田駅下車徒歩3分、京浜急行線京急蒲田駅下車徒歩10分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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