尻手 角打「有限会社新川屋酒店」第2回
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第501回 2012年12月22日(土) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
尻手 角打「有限会社新川屋酒店」 第2回
~ いいなあ、のりちーず ~

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三連休の初日の土曜日、JR川崎駅の西口へ行ってみた。クリスマス商戦で賑わうショッピング・モール「ラゾーナ川崎プラザ」は、家族連れやカップルでいっぱいだった。
そんな群衆の中を独りで歩いていると、妬みとか嫉みとは違う、淡い疎外感のようなものが脹らんでくる。そして、やがて心に浮かぶのは、未来に起こるかもしれない大きな災厄の光景であり、悲しみに近い感情である。
←「ラゾーナ川崎プラザ」
それは、子供の頃からずっと持ってきた心の動きであった。
「ラゾーナ川崎プラザ」と駅前ロータリーを挟んだ反対側にあるのがコンサートホールと高層のオフィス・ビルとショッピング・モールからなる「ミューザ川崎」である。
「ラゾーナ川崎プラザ」の南西角部分に現在建設中の高層ビルがあり、そのビルの全フロアを「東芝」が借り上げて、スマートコミュニティ事業体制の強化を目的とする「スマートコミュ二ティセンター」という施設を作るそうである。
「ミューザ川崎」が建つ前にあった小さな飲食街に私の生まれた家はあった。ちょうど、「スマートコミュニティセンター」の建つ場所には「東芝堀川町工場」の5階建てほどの建物が建っていて、私は部屋の中からいつも工場の壁ばかり見ていた記憶がある。
←「ミューザ川崎」
さらに、「ミューザ川崎」の南側に残っていたJRの土地には、羽田空港の国際化に併せて、ホテルや国際会議場をもった複合施設が出来るそうである。上の写真でいえば左手側。
※ ※ ※
酒を飲みたいと思う。でも、どこのお店にも入ろうという気持ちになれなかった。
そのまま、川崎駅前から大通りをどんどん歩いて、いつの間にか、JR南武線の川崎から一つ目の駅、「尻手(しって)駅」についていた。
尻手駅の改札を出ると、右手に狭い商店街があり、入ってゆくと左手のストアーの先に「新川屋酒店」という酒屋さんがある。

前述の巨大ショッピング・モールの飲食街よりも、このようなお店に心引かれるのである。
左側の普通にお酒を買う入口と自動販売機を挟んで反対側、右側にもう一つ入口がある。
前回、こちらのお店を紹介したのは2010年4月10日の第335回である。もちろん、その後も何度かうかがっている。
ガラス戸を開ける。左手のL字カウンターの中央辺りに空間が空いていた。入ってすぐの左角あたりに場所が空いていたのでそこに立つ。カウンターの中には、マスターとママさんの二人。
まずは、ホッピーセット(410円)を飲みたいと思う。
「ホッピー、氷無しでお願いします」とカウンターの中のママさんに伝える。
つまみは、さつまあげ(250円)をお願いした。
店内奥右手の入口辺りからは見えない場所のテーブル席では、今日も御宴会の様子である。
八海山(350円)を飲みたいと思う。でも、「一人二杯まで」という文字につられてしまい、
にごり酒(250円)にしてみることにした。
無造作にカウンターの上に置かれたビアタンブラーに一升瓶からにごり酒が注がれた。カウンターが斜めなので、当然のようにこぼれる。手を触れることも出来ず口から迎えにゆく。うまい。
奥の方の冷蔵庫の上にブラウン管テレビが乗っている。カウンターのお客さんは、みんなこのテレビに目をやりながら飲んでいるのだ。
ニュースが始まった。時計を見れば、午後6時になっていた。すると、帰ってゆかれる方が二人ほどいらっしゃった。時間を決めて飲んでいるのかなと思う。
「ごちさうさま」とお客さん。
すると、飲んだ飲み物と食べたものを正直に自己申告される。
それからママさんが計算をしてお金を支払うのである。
いつも思うのだけれど、みんなきちんされているのだ。そして、えばるような人もいない。
6Pチーズ(70円)の品書きが目に入った。
「6Pチーズのり・・・お願いします」と私。
「のり何枚ですか?」とママさん。
「ええ・・・どうしますかねえ」と私。
「のりサービスだから、適当に出しますね」とママさん。
のりは、四枚ついてきた。のり好きにとってはうれしいのである。
「いいなあ、のりちーず」と心の中で思う。和風であり同時に洋風のつまみ、究極のツマミかもしれない。
炒め物が始まる。すると、入口近くのお客さんにママさんが声をかける。
「換気扇のスイッチ、お願いします」
カウンターの中から換気扇のスイッチに手が届かないのである。お客さんも笑顔でスイッチを入れてあげる。
「いいなあ、たすけあい」と心の中で思う。
「天ぷら四点280円ミニです」というメニューもある。よい。
出先のSAKURAからメールが来た。
待ち合わせすることになった。
「天ぷら、最後の分がありますよ」とママさんが言う。
「そう、それちょうだい」と常連さん。
「最後っていえばさ、確か、今日、世界が終わったよね」と常連さんがおっしゃる。
一瞬、びっくりして、すぐに「マヤ文明の暦が終わっているので世界が終わるのではないか」という流行の終末論の話であることに気づいた。
「全然終わらないよね・・・たしか、今日で終わって、また始まるんだよね。あけましておめでとうだ。」とのこと。
「世界は終わらない・・・ただ、私は終わるかもしれない」等と思う。
常連の方が焼酎とお湯を頼むと、ボトルではなく紙パック焼酎が出てきた。ボトルキープではなく紙パックキープである。。
「お勘定お願いします」と私。ママさんがやってくる。私も自己申告である。
「何を呑みましたかあ?」とママさん。
「ええと、ホッピーセットです」
「氷なしですよね・・・ホッピーが360円」
「えっ、410円じや」
「氷の分50円引きますから」
すっかり、氷代50円が別になっていることを忘れていたのである。実に正直な商売である。
「ホッピー、さつまあげ、にごり酒、海苔四枚のチーズです。」と私。
「海苔はサービスですから・・・930円」とママさん。
安い、実に安く飲めるのである。
「ごちそうさまでした、よいお年を」と私。
「よいお年を」とママさんとマスターも笑顔で言ってくれた。
たったの930円で身体も心も温まった。
そして、すぐ目の前の尻手駅からJR南武線に乗った。
待つ人がいる次の酒場へ向かうためである。
(つづく)
尻手 角打「有限会社新川屋酒店」
住所 神奈川県川崎市幸区南幸町3丁目104
電話 044-522-4830
定休日 不定休(休む時は日曜日とのこと)
営業時間 17:00~22:00
交通 JR南武線尻手駅下車徒歩10秒
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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居酒屋探偵DAITENの生活 第501回 2012年12月22日(土) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
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三連休の初日の土曜日、JR川崎駅の西口へ行ってみた。クリスマス商戦で賑わうショッピング・モール「ラゾーナ川崎プラザ」は、家族連れやカップルでいっぱいだった。
そんな群衆の中を独りで歩いていると、妬みとか嫉みとは違う、淡い疎外感のようなものが脹らんでくる。そして、やがて心に浮かぶのは、未来に起こるかもしれない大きな災厄の光景であり、悲しみに近い感情である。

それは、子供の頃からずっと持ってきた心の動きであった。
「ラゾーナ川崎プラザ」と駅前ロータリーを挟んだ反対側にあるのがコンサートホールと高層のオフィス・ビルとショッピング・モールからなる「ミューザ川崎」である。
「ラゾーナ川崎プラザ」の南西角部分に現在建設中の高層ビルがあり、そのビルの全フロアを「東芝」が借り上げて、スマートコミュニティ事業体制の強化を目的とする「スマートコミュ二ティセンター」という施設を作るそうである。
「ミューザ川崎」が建つ前にあった小さな飲食街に私の生まれた家はあった。ちょうど、「スマートコミュニティセンター」の建つ場所には「東芝堀川町工場」の5階建てほどの建物が建っていて、私は部屋の中からいつも工場の壁ばかり見ていた記憶がある。

さらに、「ミューザ川崎」の南側に残っていたJRの土地には、羽田空港の国際化に併せて、ホテルや国際会議場をもった複合施設が出来るそうである。上の写真でいえば左手側。
※ ※ ※
酒を飲みたいと思う。でも、どこのお店にも入ろうという気持ちになれなかった。
そのまま、川崎駅前から大通りをどんどん歩いて、いつの間にか、JR南武線の川崎から一つ目の駅、「尻手(しって)駅」についていた。
尻手駅の改札を出ると、右手に狭い商店街があり、入ってゆくと左手のストアーの先に「新川屋酒店」という酒屋さんがある。

前述の巨大ショッピング・モールの飲食街よりも、このようなお店に心引かれるのである。
左側の普通にお酒を買う入口と自動販売機を挟んで反対側、右側にもう一つ入口がある。
前回、こちらのお店を紹介したのは2010年4月10日の第335回である。もちろん、その後も何度かうかがっている。
ガラス戸を開ける。左手のL字カウンターの中央辺りに空間が空いていた。入ってすぐの左角あたりに場所が空いていたのでそこに立つ。カウンターの中には、マスターとママさんの二人。
まずは、ホッピーセット(410円)を飲みたいと思う。
「ホッピー、氷無しでお願いします」とカウンターの中のママさんに伝える。
つまみは、さつまあげ(250円)をお願いした。
店内奥右手の入口辺りからは見えない場所のテーブル席では、今日も御宴会の様子である。
八海山(350円)を飲みたいと思う。でも、「一人二杯まで」という文字につられてしまい、
にごり酒(250円)にしてみることにした。
無造作にカウンターの上に置かれたビアタンブラーに一升瓶からにごり酒が注がれた。カウンターが斜めなので、当然のようにこぼれる。手を触れることも出来ず口から迎えにゆく。うまい。
奥の方の冷蔵庫の上にブラウン管テレビが乗っている。カウンターのお客さんは、みんなこのテレビに目をやりながら飲んでいるのだ。
ニュースが始まった。時計を見れば、午後6時になっていた。すると、帰ってゆかれる方が二人ほどいらっしゃった。時間を決めて飲んでいるのかなと思う。
「ごちさうさま」とお客さん。
すると、飲んだ飲み物と食べたものを正直に自己申告される。
それからママさんが計算をしてお金を支払うのである。
いつも思うのだけれど、みんなきちんされているのだ。そして、えばるような人もいない。
6Pチーズ(70円)の品書きが目に入った。
「6Pチーズのり・・・お願いします」と私。
「のり何枚ですか?」とママさん。
「ええ・・・どうしますかねえ」と私。
「のりサービスだから、適当に出しますね」とママさん。
のりは、四枚ついてきた。のり好きにとってはうれしいのである。
「いいなあ、のりちーず」と心の中で思う。和風であり同時に洋風のつまみ、究極のツマミかもしれない。
炒め物が始まる。すると、入口近くのお客さんにママさんが声をかける。
「換気扇のスイッチ、お願いします」
カウンターの中から換気扇のスイッチに手が届かないのである。お客さんも笑顔でスイッチを入れてあげる。
「いいなあ、たすけあい」と心の中で思う。
「天ぷら四点280円ミニです」というメニューもある。よい。
出先のSAKURAからメールが来た。
待ち合わせすることになった。
「天ぷら、最後の分がありますよ」とママさんが言う。
「そう、それちょうだい」と常連さん。
「最後っていえばさ、確か、今日、世界が終わったよね」と常連さんがおっしゃる。
一瞬、びっくりして、すぐに「マヤ文明の暦が終わっているので世界が終わるのではないか」という流行の終末論の話であることに気づいた。
「全然終わらないよね・・・たしか、今日で終わって、また始まるんだよね。あけましておめでとうだ。」とのこと。
「世界は終わらない・・・ただ、私は終わるかもしれない」等と思う。
常連の方が焼酎とお湯を頼むと、ボトルではなく紙パック焼酎が出てきた。ボトルキープではなく紙パックキープである。。
「お勘定お願いします」と私。ママさんがやってくる。私も自己申告である。
「何を呑みましたかあ?」とママさん。
「ええと、ホッピーセットです」
「氷なしですよね・・・ホッピーが360円」
「えっ、410円じや」
「氷の分50円引きますから」
すっかり、氷代50円が別になっていることを忘れていたのである。実に正直な商売である。
「ホッピー、さつまあげ、にごり酒、海苔四枚のチーズです。」と私。
「海苔はサービスですから・・・930円」とママさん。
安い、実に安く飲めるのである。
「ごちそうさまでした、よいお年を」と私。
「よいお年を」とママさんとマスターも笑顔で言ってくれた。
たったの930円で身体も心も温まった。
そして、すぐ目の前の尻手駅からJR南武線に乗った。
待つ人がいる次の酒場へ向かうためである。
(つづく)
尻手 角打「有限会社新川屋酒店」
住所 神奈川県川崎市幸区南幸町3丁目104
電話 044-522-4830
定休日 不定休(休む時は日曜日とのこと)
営業時間 17:00~22:00
交通 JR南武線尻手駅下車徒歩10秒
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
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